2018/04/22
高校野球を始め、現在のアマチュア選手の技術の向上には、現役やOBのプロの選手が、技術やその習得のための訓練方法を様々なメディを通じて惜しげもなく公開していることがとても大きいのではないかと思います。しかし一方で、テレビ出演等で手の内を明かしすぎて成績に影響している選手も中にはいるように思います。
前田健投手がプレイクしたての頃、2種類のスライダーがあることやその握りもテレビ番組で明かしたことがありました。握りを明かすことは問題はないのかもしれませんが、2種類のスライダーがあることで追い込むまでは曲がりの緩いスライダー、追い込んでからは鋭く曲がるスライダーを投じることが容易に想像できて、スライダーが狙われるおそれがあると思っていたところ、その放送の次の登板でスライダーを狙い打たれて大量失点で敗戦投手になっていました。そのあとは問題なく勝ち星を重ねていましたが、その後テレビで球種について語ることはなくなり、握りについてもおそらく嘘の握りを見せているように思います。
また、ジャイアンツに在籍した東野峻投手は、ジャイアンツの中心選手であった絶好調の頃に、右打者の内角にはストレート、外角にはスライダーを投げることを明かし、内角ならばストレートのタイミングで、外角ならばスライダーのタイミングで待たれると、かなり打ち込まれてしまうのではないかと思っていたところ、やはり次の登板で相手打線を抑えることができませんでした。その後もなかなか勝ち星を重ねることができなくて、オリックス、ベイスターズと渡り歩いて10年の現役生活で引退しています。
今年のジャイアンツもオープン戦では1位でしたが今はなかなか勝ち星が上げられなくなっています。それも選手のテレビ出演が大きく影響しているのではないかと思います。
菅野投手は開幕前に多くのテレビ出演をしていましたが、以前から、ランナーが出るまでは力を抜き、ランナーがたまってくるとギアを上げて投げるという発言をしていて、その内容からランナーが出たときにはストレートが多くなるということが容易に想像できました。おそらくそういうデータもあって阪神の金本監督がストレートに振り負けない打線を作ることで菅野投手を攻略することができました。次の登板でも菅野投手は勝ち星を上げることができずに現在のジャイアンツの不調につながっているのだと思います。ただし菅野投手はすべての球種がウイニングショットとして使えるだけのクオリティがあるので、これからは勝ち星を重ねていけると期待しています。
また、深夜に小林捕手を特集した番組の中で、阿部選手が小林捕手が内角高めのボールを要求することが全くないことを指摘して、外角の球を思い切り踏み込まれて打たれていることを明かしました。各球団のスコアラーもそういう分析はしていると思いますが、テレビで実際に本人が認めるのはかなり大きいのではないかと思います。内角高めは真ん中にいけば長打、打者側に外れれば一発退場のおそれもあって要求しにくいボールではありますが、開幕しても内角高めのボールを要求していなければ、相手打線を抑えるのは難しいのではないかと思います。
逆にメディアで嘘の情報を流すことで勝利を手繰りよせた例もあります。1995年のヤクルト対オリックスの日本シリーズで野村監督が内角高めにイチロー選手が弱いのでそこを攻めると宣言し、外角のボールで打ち取るという作戦を取って4勝1敗で日本シリーズを制しました、
このようにテレビで手の内を明かすことは実際にかなり厳しい状況に追い込まれたり、上手く利用することで試合を優位に進めるということもあるのですが、手の内を明かさなくとも不調の原因になりうるのではないかと私は考えています。
野球は試合の流れであるとか勢いという言葉が普通に使われるスポーツで、目に見えない力がかなり働くスポーツなのだと思います。その中で選手の普段の行動によって運のいい選手、悪い選手というふうに分かれる場合があるように思います。科学的に因果関係は証明できませんが、テレビ出演は選手の運をなくすのではないかと私は思っていて、上原投手が開幕してすぐにS-PARKに出演して大丈夫かなと思っていたところ、絶不調に陥ってしまいました。
子供たちやプロを目指す選手にプラスになるような情報をシーズンオフに提供することはとてもいいことだとは思いますが、手の内を明かしたりシーズン中のテレビ出演は控えたほうがいいのではないかと私は思っています。