2018/03/02
今回の平昌オリンピックは日本にとってターニングポイントとなった可能性があると同時に、スポーツと政治の関係がかなりクローズアップされた大会だったのだと思います。
4年に1度ということで、選手にかかるプレッシャーは他の国際大会とは比べ物にならず、これまでのオリンピックでは実力が出し切れずに涙する選手も多くいましたが、今回はメダリストもそうでない選手も実力を出し切った選手が数多くいた大会だったのだと思います。長野でも多くのメダルを獲得できましたが、アウェイ、特に日本とは関係が決していいとは言えない韓国での開催でこれだけの結果を収めることができたのは、日本のスポーツ界がメンタルの部分では、ひとつ上の次元に進めたのではないかと私は思っています。
ここで培った本番で実力を発揮するためのノウハウは夏季のオリンピックでも生かされ、オリンピック以外での様々な競技の世界大会での好成績にもつながるのではないかと思います。その意味では今回の平昌オリンピックは日本のスポーツ界のターニングポイントになるのではないかと期待しています。
このような素晴らしい成績を収めたオリンピックであった一方で、政治利用が近年でも特に取り沙汰されたオリンピックであったとも言えるのだと思います。
韓国の政府が慰安婦問題で日本にさらなる謝罪を求めたことから、安部総理の開会式の出席に党内からも批判が起きたり、北朝鮮がオリンピックに出場することで融和ムードを演出しながら、制裁の緩和や核開発の時間稼ぎを狙っているのではないかとも言われていました。
私はスポーツと政治は完全に切り離すべきと考えていて、オリンピックを政治利用しようとする国が見られる中で、安部総理が政治とスポーツは別という姿勢を示せたのはとても良かったのだと思います。
スポーツは特にオリンピックは、たとえ紛争状態の国であってもスポーツによる交流がきっかけで和平につながる可能性がある、人間のあらゆる行動の中でも非常に尊い側面を持っているのだと思います。政治がオリンピックを利用することは決してあってはなりませんが、逆にオリンピックが国や人を結びつけ、政治に大きな影響を与えることは歓迎すべきことなのだと思います。その意味でも安倍総理の開会式出席は英断だったと言えるのだと思います。
もう一つ、これは極めて現実的で政治的な側面がある解釈だとは思いますが、日本の安全保障を考えれば、日本と韓国が慰安婦や竹島の問題で歩調が合わなくなれば、その状況を最も喜びその状況をうまく利用しようとするのは北朝鮮なのだと思います。
昨日文在寅大統領が慰安婦や竹島の問題で日本を批判したことに関しては怒りを覚えた人も数多くいるとは思いますが、国と国の関係においては、ひとつやふたつ懸案があるのは普通のことで、良好な関係にあるアメリカとも、沖縄の基地の問題、地位協定の問題、先日の青森でのFー15が燃料タンクを落とした問題でも補償はおろか謝りもしないという状況もあります。一方アメリカも日本に対する貿易赤字は面白く思っているはずはなく、だからと言って日米の関係が険悪になるといったことはあってはならないのだと思います。
国と国の関係にあっては優先順位は決まっていて、極東、特に北朝鮮に対する安全保障が日韓の関係にあっては最も重要視されるべき事案で、慰安婦の問題や竹島の問題がそれよりも上位にあるということはありえないのだと思います。
現実的な危機よりも感情が上回るということは絶対にあってはならず、これは政府だけではなく、多くの国民も改めて認識すべきことなのだと思います。
慰安婦の問題や竹島の問題は、おそらくこれから劇的に解決に向かうということは考えにくいのだと思います。国と国との間にある懸案は、日本と関係する重要な国、アメリカ、ロシア、中国、ヨーロッパ各国にも多かれ少なかれ存在します。そのような感情的、実際に国益に関係するも問題があったとしても、より良い関係を続けていくためには、お互いの国の国民同士が理解や交流を深めていくことが重要で、今回のオリンピックで、小平選手とイサンファ選手の友情や、羽生選手が韓国で見せた韓国のファンに対する心遣い、カーリングの藤澤選手が韓国語ができたり、その可愛さが注目されたことは、オリンピックが持つ人と人、国と国を結びつけるという崇高な目的のための大きな力になったと思いますし、その動きをさらに進めていく必要があるのだと思います。両国の国民の理解が進めば、お互いが納得する形で問題が解決するということもありえるのだと思います。
日本と韓国との関係は50年前から比べれば格段に良くなっています。これから時代が進めばさらによくなっていくのは間違いないでしょうし、そうしていかなければならないのだと思います。
解決すべき問題と、国と国との友好を別の問題と考えることは、直近の問題を見ても長期的な視点から見ても非常に重要で、その意味ではそれぞれの優れた文化を知り、スポーツを通じて理解を深めていくことは意味のあることなのだと思います。その意味で、今回のオリンピックは単なるスポーツの祭典ということだけではなく、日韓の関係や極東の安全保障を考えるうえでも、重要なターニングポイントとすべきなのだと私は考えています。