2015/03/31
大塚家具のお家騒動が話題になっていますが、勝久会長と久美子社長の争いの本当の理由は、決して語られないのだと思います。
勝久会長は、最初は「このままでは優秀な社員が皆会社を辞めてしまう」と言っていましたが、なぜ社員が辞めてしまうのか、具体的な理由は決して語りません。
家具販売は、非常に特殊な営業スタイルで、扱う商品が数千円のものから数百万円のものまであって、販売員の能力、販売方法によって売上が大きく変わっていきます。
おそらく大塚家具もそうなのだと思いますが、販売員の月の売上に従ってランクが分かれていて、売上高に従って年収が大きく変わってくるような給料に体形になっているのではないかと思います。
そうなると、久美子社長のやり方では、扱う家具の単価が安くなり、しかもそこから値引きということになれば、販売員一人あたりの月の売上高は大幅に減少して、年収の大幅減ということになるのだと思います。社員一人一人の報酬の高さが会社の経営を圧迫していた可能性もあるので、報酬引き下げの効果を期待しての経営方針の転換という側面もあったのではないかと思います。
そうなると、豊富な商品知識を持ち、優れた接客技術で会社を盛り立ててきた優秀な社員から会社を辞めてしまい、大塚家具の最も大きな特徴を失ってしまうことになると勝久会長は思ったのだと思います。安売りではイケヤ、ニトリ、カッシーナといった競合他社には勝てず、また、株価を見るとバブルのような状況がもう一度くる可能性もあるので、高級路線を貫いていけば必ずまた日の目を見ることがあるだろうという目算もあったのだと思います。
しかし勝久会長は、高級路線堅持ということよりも、手塩にかけて育て、ともに会社を大きくしてきた社員に対する情が会社経営よりも優っていたのではないかという感じがしてなりません。長年勤めてきた社員の中には多額のローンを抱えている人もいれば、子供が大きくなって教育費がかかる人もいると思います。そういう社員に泣きつかれた勝久会長が、久美子社長の更迭を考えた思えてのではないかと思えてなりません。それが「このままでは優秀な社員がいなくなってしまう」、また、会長夫人の「社員さんをあまりいじめないで欲しい」という発言につながっているように思います。
久美子社長は、勝久会長の記者会見を「社員さんを巻き込んだ演出」と言っていましたが、あれは演出でもなんでもなくて、逆に社員が会長を担ぎ上げた、久美子社長に対する社員によるクーデターであった可能性も否定できないのではないかと思います。
このことは、勝久会長も久美子社長も口が裂けても決して言わないのだと思います。これはお家騒動ではなく、会社のためでも株主のためでもなく、社員が自分の生活を守るために起こした騒動であるということになれば、大塚家具の顧客が販売員の言うことを一切信じなくなる可能性があります。
これは会社ブランドが落ちるよりも、『お家騒動の会社』というレッテルが貼られるよりも、会社にとってははるかに大きな痛手になる可能性があるように思います。
ですから、本当のことは言わずに勝久会長も久美子社長も自ら『お家騒動』という形に甘んじているように思えてなりません。
会社経営は本当に難しくて、経済の状況によって大きく利益を上げるモデルが変わってきます。どちらの言い分が正しいのか私にはわかりませんが、これから大塚家具がどうなっていくのか興味深く見守っていきたいと思っています。