2016/09/30
ハリルホジッチ監督の責任を問うのはお門違い
ハリルホジッチ監督の責任を問う声がちらほら出てきていますが、まったくお門違いも甚だしいとしか言いようがありません。ブラジルワールドカップでは日本は散々な結果に終わりましたが、それにはいくつかの理由がありました。
まずひとつめには、日本は緻密な連携に基づくパスサッカーを得意としていましたが、これはメンバーを固定しなくてはできない戦略で、1人メンバーが欠けても連携が崩れるため、どんなにコンディションが悪くても固定した選手を使わざるを得ず、最悪のコンディションのメンバーばかりを使うことで日本らしいサッカーが全くできませんでした。
ふたつめには、このようなパスサッカーは、調子がいい時でさえ、相手が日本よりも劣るアジアの国であってもひいて守られると得点は難しく、W杯本戦のような世界のトップレベルの国がすごいスピードで体を張って守備をすると、なかなか点を取ることはできなかったのだと思います。
みっつめには、日本の守備は、相手に抜かれないことを目的にしているため距離を詰めず一定の距離を保つので、ドリブルが得意な選手がひとりでエリア近くまで簡単にボールを運ぶことができたり、中盤あたりではボールを持っている選手でもノーマークの場合があって、絶妙なロングパスから失点という場面も多く見られました。日本の守備は世界標準からはかけ離れた非常に劣ったものだったのだと思います。
ハリルホジッチ監督は、日本のパスサッカーではなく堅守速攻のチームを作ることで、誰が出場しても同じようなレベルのプレイが出来るようなチームを作りつつあります。攻撃に関してならJリーグの選手でも得点シーンが増えたように思います。W杯ではコンディションの悪い選手を休ませたり、調子を整えさせることが可能になるので、ベストに近いコンディションの選手ばかりで試合に臨める可能性が高まったのだと思います。そして、速攻は相手の守備が整う前にシュートができる場合が増えるので、パスサッカーよりも得点率は間違いなく上がるのだと思います。
守備に関しても、ボールを持った選手にプレスをかけて、ボールを奪う守備ができるようになってきましたし、どの位置でもボールを持った選手に前を向かせなかったり、パスコースを狭めることで、パスを奪う確率も格段に上がったように思います。プレスをかければ相手に抜かれるリスクは高まりますが、そのときは体を当てて止めたり、上手く連携して違う選手がカバーしたりといったことも出来始めているので、守備も世界標準になりつつあるのだと思います。
ただ、このような守備ができているのは欧州組の選手に多く、Jリーグの選手が増えるとかなり不安定な守備になりがちなので、ここはJリーグの選手の奮起に期待したいと思います。
このようにハリルホジッチ監督の指導のもと日本代表チームは見違えるほど素晴らしいチームになりましたが、ひとつ難があるとすれば、それはひいて守る国に対して速攻はあまり効果を発揮しないというところだと思います。
しかし、先日のタイ戦で見せたようにポゼッション重視で、上手く緩急をつけたりサイド攻撃からのセンタリングでチャンスを多く作ることもできましたし、相手が前掛かりになったところでのカウンターでも得点できたので、ひいた相手でもタイ戦のようなサッカーができれば勝ち続けることができるのではないかと思っています。
UAE戦で敗れたのは、明らかに「中東の笛」のためで、あれをやられたらどんなに実力差があっても勝つことは極めて難しくなります。特にW杯予選では何が起こるかわからず接戦になることが多いので尚更だと思います。
そして、主力が欧州組ばかりなので、一緒に練習する時間が極めて少ないというのはやはり大きなデメリットだとは言えるのだと思いますが、Jリーグの選手と欧州組とでは実力差があるので、欧州組を多く使わざるを得ないことに反論する人はいないのだと思います。その欧州組でもレギュラーではない選手が多く、試合勘が鈍っている選手も増えてきているのは否定できない事実なのだと思います。
しかし、これらのことは監督がコントロールできる範囲のものではなくて、そのことを監督の責任にするのはあまりにも理不尽であるとしか言いようがありません。批判をするのであればどうすればいいのか、監督が誰だったらそんな状況でもコントロールできるのか教えていただきたいと思います。
10月のイラク戦、オーストラリア戦は、そのような状況から厳しい試合になることは間違いないと思いますが、「中東の笛」さえなければ2戦とも勝利できると私は信じています。実力、戦略的にも日本に弱点はなく、日本のサッカーができれば、2戦とも勝利できるはずです。
ハリルホジッチ監督という優れた指導者と日本代表の選手の力を信じて、必ず勝利できるよう応援していきたいと思っています。