2017/05/19
秋篠宮眞子さまのご婚約とともに女性宮家の設立を急ぐべきとの声が聞こえてきます。これは女系天皇につながる話で日本のアイデンティティに関わる話となり、議論を深めていく必要があるのだと思います。私自身は皇室が廃止されてもいいのではないかと考えていた時期もあるのですが、世界最古の王室であること、日本人の多くが敬愛してやまないこと、平和、文化、統合の象徴として存続が望まれていることから、できる限り伝統を守りつつ残していくべきと考えています。
女系天皇、女性宮家にはそれぞれ問題があって、皇室存続に関わるおそれが否定できないのだと思います。
まず女系天皇についてですが、天皇制の歴史を見ても、現在の法制度を見ても、天皇たる資格は男系であるということが唯一の条件であって、これは天皇制の根幹であるとともに唯一のルールと言っていいのだと思います。ここを外してしまえば、今までの天皇制の歴史をすべて否定することにつながるのだと思います。
伝統というものは時代とともに変化する部分はあっても、どんなに時代が変わっても、むしろ時代が変わるからこそ残していかなくてはならない本質というものがあるのだと思います。相撲にたとえていいかわかりませんが、相撲の本質は神事であって、時代が変わり宗教が科学的に肯定することができないからと言ってこの部分を否定してしまえば、それは相撲ではなくなってしまうのだと思います。世界を見ても、王室を持たない国はむしろ王室を持つ国よりもはるかに多くて、天皇制が日本にどうしても必要な制度であるとは言えないのだと思います。天皇制にとって唯一のルールが変わってしまえば、それはもう天皇制とは言えず、これを残していく意味はないのだと思います。
天皇制は世界的に女性差別の制度と言われていますが、そんなことは全くありません。過去には女性天皇もおられましたし、天皇制の基である神道は決して男尊女卑の宗教ではなく、神と女神が平等に崇められていて、日本を創造したイザナギ、イザナミは同等に描かれています。またイザナミは女神でありながら黄泉の主宰神となっています。皇室の祖神で、日本人の総氏神である天照大神は女神であって、むしろ女性上位の宗教と言ってもいいのだと思います。このような成り立ちがあるにもかかわらず、男系にこだわったのはやはり大きな意味があるとしか考えられず、この部分をないがしろにしてしまえば、皇室の成り立ち、日本人のアイデンティティの否定につながるおそれもあるのだと思います。
また、日本人が天皇陛下を敬愛するのは血統ではなく、敬愛すべき人格の方だからということを言う学者さんもいますが、これはかなり危険な考えなのだと思います。もしも皇位継承者が天皇にふさわしい人格でない場合、国民や内閣、国会で皇位後継者から外すべきという議論が出てくるおそれがあるのだと思います。そしてその場合、天皇にふさわしくない人格というのはいったい誰がどのように決めるのでしょうか。これを認めてしまえば時の政権が自由に天皇を決められるということにもなりかねないのだと思います。また、血統が関係ないというのであれば一般のなかから天皇にふさわしい人を選ぶということも考えられて、それは既に天皇制の原型をとどめているとは言えないのだと思います。
次に女性宮家の設立ですが、女性宮家の設立が天皇制の消滅につながるおそれは十分にあるのだと思います。男性が婿養子に入るのは一般的にも難しい問題がある上に国民の多くが納得する男性で、天皇家の婿養子になる人が何人もいるとは考えにくいのだと思います。今まで普通にできたことも制限され、場合によっては仕事を辞める、もしくは変わらざるを得ない場合もある上に、皇室の規則、礼儀、振る舞いを一から学び、内閣、宮内庁のみならず全国民から厳しく監視されるような生活に入ることは並大抵ではないのだと思います。女性には男性と違い出産適齢期というタイムリミットもありますし、女性宮家の設立に伴って生涯独身という皇族の方が出てくることも十分に考えられます。そうなれば、女性男性という問題ではなく天皇家自体が途絶えていしまうおそれもあります。そうならない可能性もあるとは思いますが、最悪の事態になってからでは遅すぎるのではないでしょうか。何より女性皇族の方々のお幸せを第一に考えるべきなのだと思います。
これらの解決策として廃止した宮家の復活に問題があるとは思えないのですが、どうしてもできないというのであれば、廃止した宮家の中で男系男子のお子様が生まれた場合、何人か秋篠宮家の養子にするということもあっていいのではないかと思います。
しっかりと議論を尽くし、多くの人が納得し、皇室、日本にとってベストな答えを出していただきたいと思います。