2017/09/21
日本の財政状況が破綻寸前と言われていますが、確かに負債額だけを見ればいつ破綻してもおかしくなく、すぐにでも消費税を上げなくてはならないように思えますが、「有事の円」と呼ばれるように日本の財政への国際的な評価はかなり違っているようです。消費税を今すぐに上げる必要がない理由が二つあると私は考えています。
まず財務省が作成している平成27年度「連結財務書類」を見みると、連結の負債総額が1423.9兆円に対して資産総額が 958.9兆円となっています。この貸借対照表には日銀が保有する国債の総額が記されていませんが、現在の時点で400兆円と言われています。来年も緩和は続けるので、バランスシートで見れば負債を資産が上回ることもあるのだと思います。
(http://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2015/20170330gaiyou.html)
元財務官僚の高橋洋一教授は、統合政府で考えた場合には日銀は政府の子会社となり、親会社の負債に対する債権を子会社が所有する形となるのでその分は相殺されると主張しています。そして利払いに関しては、日銀が得た利益は国庫に返すことになるので実際に支払わないのと同様になるとしています。ノーベル経済学賞受賞者であるスティグリッツ教授も日銀保有分の国債に関しては無効化(相殺)できるとしています。
通貨の価値に関しては様々な要素で決まるので一概には言えないのかもしれませんが、高橋教授は安倍政権以前の異常な円高は円の希少性に起因するとしていました。リーマンショックに伴ってFRBとECBが、現在の日本とは比べ物にならない超金融緩和を実施していたのに対して、日本のマネタリーベースが全く増えないことから相対的に円の希少性が高まり、異常な円高になっていました。高橋教授は、日本も金融緩和を実施することで円安になると主張していましたが、当時メディアに出演していた経済学者、評論家はそのことに懐疑的で、実際には金融緩和が実施されて、1ドル80円を切っていたのが、120円台にまで下落しました。
メディアで活躍する学者や評論家の言うことはあまりにトンチンカンで、金融緩和をしたら金利が急上昇して国債が暴落するとかハイパーインフレになるとか言っていましたが、先行して超絶金融緩和を実施していたアメリカや多くのヨーロッパの国々はそんなことは起きていないのは調べるまでもなく明白で、一般人である私ですらそんなことは絶対にないと分かっていましたし、そのような意見もしていました。このことに関しては、多くのニュース番組が放送法第4条3項に違反していたと思っています。
多くの学者や評論家が一瞬でばれるデタラメを言っていたのに対して、高橋教授の経済予測の正確性は突出していました。金融緩和で失業率が下落すること、それにともなって自殺者や凶悪犯罪が減少すること、消費増税を実施すれば賃金の上昇は難しくなることなどすべて的中しています。失業率に関しては、欧米の中央銀行は失業率の低下に責任を負っていて、今回日本でも金融緩和によって失業率が大幅に下落したことを受けて、日銀にも失業率に関する責任を負わせるべきだと私は強く主張したいと思っています。欧米に出来て日本に出来ないことはなく、それができないと主張するのであれば、中央銀行の質が、欧米とは比べ物にならないほど劣っていることを自ら認めることになるのだと思います。
話はそれましたが、金融緩和によって円安になったという事実があるのに対して、現在の状況は欧米が大規模金融緩和を終えて、日本だけが金融緩和を続けている上にFRBが何度も利上げに踏み切っていることから、更に円安に振れていなくてはならないのですが、現在の円相場は1ドル110円前後で、FRBが大規模金融緩和を続けていた時よりも円高になっています。20日のFOMCの発表で今後円安傾向になると予想されていますが、本来の円安の動きから見れば円高傾向にあると言っていいのだと思います。経済予測をほぼ的中させている高橋教授はその理由として、日本が世界最大の債権国であること、日銀が大量の国債を保有することで負債が相殺され、他国よりも財政がはるかに健全化されていることを挙げています。マネタリーベースの増加による円の希少性の喪失や、金利差による円安要素をはるかに上回るほど、日本政府に対する世界からの信頼性が高まっているということなのだと思います。
もう一つ消費増税をするべきではない理由は、デフレ脱却に至っておらず本格的な賃金上昇がないにも関わらず、所得税や法人税が増加していて、所得税に至っては安部総理就任の前年から4兆円近く増加しています。(http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/010.htm)これでデフレから完全に脱却し本格的な賃金上昇のトレンドができた場合、所得税や法人税がどれだけ増加するのか見極める必要があるのだと思います。私は消費増税は必要がないと思っていますが、消費税を上げるにしても、デフレから脱却してしばらくしてからでなければ、適切な消費税率を確定できないのではないかと思っています。
日本の将来や国民生活に直結する問題なので、世界の知恵も借りながら慎重な議論をお願いしたいと思っています。